モノ言う嵌合構造

解体を進めている。2階にあった開かずの間、土壁で遮られ、家の中からは行けなかった部屋、近年の改修で天井にベニア板が張られていた。それを、取り除いたところ。
素性の良さそうな梁が現れた。

こちらは、床下に一間角の構造体を作り、貫でつなぎ合わせる。
表面に古い今までの表情を残しながら、内部に新しい材で背骨の様なものを構築する。

ここの床下は、下から見上げる事が出来るので、痛みのない古いものを、あえて残す。

貫に楔、そして込み栓。 フレームとしては柔らかいのだが、変形量が増えると耐力の増す「嵌合構造」。 (がんごうこうぞう)

フレームを油圧ジャッキで上げる。
7㌧ジャッキが渋くて上がらない。
実は、土壁を施工してある建物は、かなり重い。

柱の根の悪い所は、根継ぎをする。
ここで用いる樹種は、やはり、120年前の建築で結果の出ている栗。

根継ぎの栗丸太

根継ぎのための栗丸太、製材屋さんで6寸角の柱を採るところ。

森とつながっている建築は面白い。

過去とつながっている建築も面白い。

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古民家再生、第3期工事

人間の住んでいる有様、まさに雑多。 無限の時間軸に、人間が反抗するかの様に。 一つの生命が、微かな生の証拠を刻むかの様に。 解体の途中に出た、階段の筆でしたためた文字、「明治30年7月、新調」。 軽く100年の時が飛ぶ。 その歳月を跨いで来た壁。 そして、存在感。

お隣のご高齢のご夫人が、縁側で手仕事をしている音が、半日しかない日射の、狭く切り立った谷間に響く。 ここは限界集落、時の流れについて、深く考えさせる空間。 この建物に、我々が「何をすれば?」ふと、考える。
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下屋部分

野地が張られた。

この古い建物も良く考えられておりまして、一番外の部分が下屋になっていて、その部分は2階が載っていないので、解体が容易で、今回は、その部分の木造の躯体を作り変えた。

鉄筋コンクリートの新設された基礎が高くなっている部分が、建物の北側の急所。
今回は、その部分を薪風呂を備える計画を立て、高基礎と薪風呂の備えの一石二鳥とした。
この部分は、北から山が迫っており、時間の問題で土が堆積すると推察される。        

全て地物の杉、まさに、「地産地消」。

追い掛け大栓継手、引っ張りに強い継手で、桁に最適。
地震の水平力を受けたとき、建物が変形し、桁の部分に引張り力が掛かる。

継手
追い掛け大栓継手

桁の納まり、折り置き。
柱は重ね臍で、頭には楔。

桁の納め
折り置き

破風・鼻隠しは手斧で仕上てもらい、手仕事らしいナイフマーク。

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寿命を延ばせる簡単な事

今まで100年の歳月をまたいで来た建物、出来る事なら、今後も、長持ちをさせたいと思います。
簡単な事の積み重ね、まずは、炭化させております。

国産唐松の大径木の赤身だけで、ご覧の様に四方柾の土台を、灯油バーナーで焙っております。

雨掛りは栗より強いではないかと言われる、大径木の唐松の心材、表情が美しいです。
その土台の臍穴を、ぶち抜きです。
長持ちをさせたい建物には、水を溜める容器は必要ないのです。

礎石の上の墨、これが通り芯です。
大工さんが、お賽銭を仕込みます。

この部分は、建物の出隅になり、雨掛かりが多くなる事が予想され、建物全体の弱点になる為、土台と柱脚を良く焙りました。

国産唐松の柾の木目、民芸の雰囲気で、とても美しいです。
礎石、手を掛けた土台の礎石との取り合い、強度を確保する為の込栓打ち込み、腐朽に対抗する為の炭化、全てが会い合わさり景色となっております。

必要と思われる事の積み重ねに「美」は現れ、魅せてやろうという心に「美」は失せる。
面白いですね。

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礎石に土台

哲学者の山の家です。
当初、コンクリートの基礎を計画しましたが、何か?この建物を「穢す」気がして、基礎屋さんに石を据えて貰いました。
築100年の建物、当然の事ながら、当初からの部分は、自然素材しかありません。
そうなると、コンクリートも何か違う気が致しました。

土台を敷く作業、礎石の形に土台を加工します。
天然石だから、簡単ではありません。
礎石に土台を乗せ、形を写して加工します。

微調整に入り、礎石の上に土台を乗せて叩きます。

赤いマジックで囲った所、土台が潰れ黒く鈍く光っております。
そこを微調整で削って行きます。

そんな事を何度か繰り返すと、礎石と土台が吸い付いたようになります。

大工さん、腕の見せ所。

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