建て方、その後

上野村の改築の現場、北側の建物に悪い諸条件が重なる部分に、鉄筋コンクリートで基礎を立ち上げ、内部は薪風呂に使用という計画です。

なんといっても、建物を持ち上げといて、その下で、基礎工事をする荒業、どうにか、無事に柱が基礎の上に載りました。

これ以上、建物を持ち上げる事ができないので、雇い臍の部材を製作して、3mm位、多めに持ち上げた柱とその部材の下に土台を水平に滑り込ませます。

あとは介している部材と土台をダボで縫いさわせる作戦です。
柱が浮遊している状態を解消して一安心です。 

計算で出ない部分は、現場で測定して、合わせて行きます。

躯体の手刻みを出来ない大工さんでは、古民家の改修は、まず、出来ないと思います。
出来る大工さんが残っていて、良かったです。

部材に墨をして、刻んで行きます。
大工さんは、とても面白がって居ります。

小胴付き長臍差し込み栓打ちです。
安定の木組み、情緒の安定にも是非どうぞ。

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木の柄合せ

内装が進んでおります。
国産杉の無節の板、和室の天井はそうしました。
畳のお部屋は、一段、格式が上がる感じと思います。

杉の無垢板
和室の天井

設計時点では、居間の吹き抜けの天井を無節で、張ろうかと思いましたが、現場で職人さんと板の柄を合わせながら確認しました。

登り梁のある吹き抜け
居間の吹き抜け

登り梁と母屋が建築当初のもので、ここに無節のきれいな板を合わせると、梁と母屋の古い表情が浮き過ぎます。
それでは、居間に絡む部分の腰壁と置き換え、張りました。
少し大らかな表情と、少し締まった表情のある壁、良い感じだと思います。

階段
階段の腰壁

冷蔵庫や洗濯機を置く部分は裏方で、節有りの国産杉の板です。

腰壁
居間の壁

無垢の板は、バランスが難しいものです。
それではと、無節ばかり出揃えると、実生活と浮いたものになることと思います。
一つの風景の中に、複数の表情の景色を持った板が混在する。
なんとなく、落ち着く感じ。

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内装を進行中

カーテンボックスです。
ブラインドを付ける予定ですので、ブラインドボックス。
目に付かない様に最小の大きさでとのご要望で、小さくほっそりと。

材料は国産杉の天然乾燥もの。
優しい表情、柔らかな雰囲気。

柄の合わせ、節の配置。
大工さん、狙っております。

階段下も造り込み中。
家具を造りこんでいる様なもの、手間は掛かりますが、雰囲気は、国産材と併せ柔らかく繊細な感じ。

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寿命を延ばせる簡単な事

今まで100年の歳月をまたいで来た建物、出来る事なら、今後も、長持ちをさせたいと思います。
簡単な事の積み重ね、まずは、炭化させております。

国産唐松の大径木の赤身だけで、ご覧の様に四方柾の土台を、灯油バーナーで焙っております。

雨掛りは栗より強いではないかと言われる、大径木の唐松の心材、表情が美しいです。
その土台の臍穴を、ぶち抜きです。
長持ちをさせたい建物には、水を溜める容器は必要ないのです。

礎石の上の墨、これが通り芯です。
大工さんが、お賽銭を仕込みます。

この部分は、建物の出隅になり、雨掛かりが多くなる事が予想され、建物全体の弱点になる為、土台と柱脚を良く焙りました。

国産唐松の柾の木目、民芸の雰囲気で、とても美しいです。礎石、手を掛けた土台の礎石との取り合い、強度を確保する為の込栓打ち込み、腐朽に対抗する為の炭化、全てが会い合わさり景色となっております。

必要と思われる事の積み重ねに「美」は現れ、魅せてやろうという心に「美」は失せる。

面白いですね。

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礎石に土台

哲学者の山の家です。
当初、コンクリートの基礎を計画しましたが、何か?この建物を「穢す」気がして、基礎屋さんに石を据えて貰いました。
築100年の建物、当然の事ながら、当初からの部分は、自然素材しかありません。
そうなると、コンクリートも何か違う気が致しました。

土台を敷く作業、礎石の形に土台を加工します。
天然石だから、簡単ではありません。
礎石に土台を乗せ、形を写して加工します。

微調整に入り、礎石の上に土台を乗せて叩きます。

赤いマジックで囲った所、土台が潰れ黒く鈍く光っております。
そこを微調整で削って行きます。

そんな事を何度か繰り返すと、礎石と土台が吸い付いたようになります。

大工さん、腕の見せ所。

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胃袋に穴が空くⅡ

建物を浮かせたままの基礎工事、こんな事、嫌なんですが、要所をジャッキアップし、補強も慎重に入れた状態。哲学者の先生は、「ユニットバスでもいい」というお話しですが、いや、先生がユニットバスに入っている光景は考えられないのです。

設計屋は、五右衛門風呂を作りたくて、大掛りな基礎工事。建物は宙に浮いたまま。

ユニットバスは先生に合わない。

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胃袋に穴が空く

画像の左側、柱が切られ、土台が撤去され、建物が中に浮いている。
建物が倒壊しない様に、ジャッキを架けるも、全てが勘の領域。
大工さんと相談しながら、建物をジャッキアップする。
若いときに、こんな仕事を請けていれば、間違いなく一晩で胃袋に穴が空く。
「明日、行ったら建物が倒れているのでは!」と。

石垣に盛土と思われる部分は、圧密沈下を起こしていると思われる部分、ジャッキアップ作業。

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築130年の改築

知人の哲学者の、山の家の改築。
「そんな、素晴らしい古民家じゃないから、後世に残すというものじゃない。」
そんな言葉を頂いて、設計屋は今後の設定寿命を30年から40年と考える。

近年の改築に使ったと思われる新建材のベニヤ板、条件の良い天井なのに、「ベロベロ」。
なんだ、この気持ちの悪い材料は。
新建材、だらしなく数十年も耐えていない。

建築当初の栗の土台、土に触れていても、なにの問題もない。
新建材に比べると、流石の表情、条件の悪い土台の位置で余裕で100年。
そして、当時の大工の息吹が感じられる切削痕。

私も解体作業に参加し、時代の生き証人と対面。
過去を検証すれば、未来が見える。

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